成年後見人制度不活用に実際
例えば、老母の認知症が進んでいよいよ介護施設に入ってもらわなければならなくなったとき、老母本人が介護施設と契約しなければならない。同時に、老母を病院に行かせて、認知症の程度を認定してもらわなければならない。
病院に行かせるのはまだ簡単であり、その後、認知症の程度の認定をしてもらうのはそれほど難しくないと思う。
私の経験だと、母が認知症の初期段階の時の数年間、「私はどこも悪くない」と言い張り、心療内科などに通院させることが全くできなかった。だからこれも本当は簡単なことではない。
それよりもさらに実際に身の回りの世話をしている親族を煩わせるのは、介護施設との入院のための契約締結だ。
仮に、契約するには、自分で物事を決めることもできる能力がなければいけない。ところが、認知程度によって、その能力がどの程度かの判断が難しい。
そして、厳密には、老母の代理人を親族の誰かになってもらうについても、老母の委任状が必要であり、その委任状の意味を理解させることさえ難しい。
だから、そのために、つまり老母のために契約の締結を行う代理人を定めるためには、家庭裁判所に申し立てて、親族の誰か(司法書士、行政書士が選任されることもある)が成年後見人になっても等分ければならないが、その手続きに時間がかかったり。そもそもその手続きを素人の親族が行う手間とか困難さがある。
実のところ、私の身の回りでも、実際に老母の面倒を見ている親族が、老母に変わって介護施設と契約して入院という誰もが望む結果を獲得できたケースを知っている。
【余談】
以上の通りで丸く収まったが、その親族は理解力の低下した老母に対して
老母:どうして、私は施設にはいらないといけないの?どこも悪くないのに?
親族:お母さんはどこも悪くないけど、この地域では歳が80歳になったら、誰でも一度は介護施設に入らないといけないことになったとよ。
老母:ああ、それで分かった。いろいろありがとうね。